
相談の入り口は「古いので新しく作り直したい」です。 ところがこの進め方は、高い確率で途中で止まります。理由は1つで、あのマクロの中には、20年ぶんの例外処理が埋まっているからです。
この客先だけ締め日が違う。この商品だけ単位が違う。 この条件のときだけ手計算に切り替える。 そうした誰も文書に残していないルールが、中で動き続けています。読み解かずに作り直すと、 稼働した瞬間に「前はできたのに」が噴出します。
移行という仕事を、実際の順番に分けると4つになります。
どのファイルが本番なのかを突き止める。似た名前のファイルが何本もあり、実は誰かの手元のコピーが本番だった、ということが普通に起きます。
ここが曖昧なまま進めると、移す対象を間違えます。
マクロやクエリの中身を読んで、業務ルールとして書き起こす。移行の本体は、実はこの読み解き作業です。
ここに時間を掛けた案件だけが、最後まで走ります。
読み解いたルールを、新しい仕組みに載せる。ここは工程としては素直で、見積もりも立てやすい部分です。
多くの人が想像する「開発」は、ここだけです。
しばらく両方動かして、同じ答えが出るかを突き合わせる。ここを省いて一斉に切り替えると、違いが出たときに戻れません。
並走の期間を見込んでいない計画は、たいてい破綻します。
この相談で本当に失われかけているのは、ファイルではありません。長年かけて積み上がった業務ルールが、読める人の退職とともに消えかけているという状態です。ですので、優先すべきは新しい道具に移すことより、 いま動いているものの中身を人が読める形にすることです。
極端に言えば、読み解きさえ終われば、移行はいつでもできます。逆に読み解きを飛ばすと、何回作り直しても同じ場所で行き詰まります。
何千行あっても、何をしているかを日本語の仕様に起こせます。人が一行ずつ追うより桁違いに速く、読み落としも減ります。
条件分岐を全部拾って、「この場合だけ違う扱い」の一覧を作る。現場に確認すべき論点が、ここで初めて目に見えます。
旧と新に同じ入力を通し、結果の違いを自動で突き合わせる。並走期間の負担が、ここで大きく変わります。
私たちは解体業向けのAIシステムを自社で開発し、実際の現場で毎日動かしています。 そこで学んだのは、日本の会社は「いま使っている様式そのまま」を必ず求めるということでした。ですので帳票の出力を3方式そろえ、 Excelの様式をそのまま出せるようにしてあります。
「作れます」ではなく、動いている画面をお見せできます。新しい仕組みに移っても、現場が見る紙の形は変えなくてよい—— これが移行の抵抗を最も下げる部分です。
同じ「Accessから移したい」でも、中に入っているのが単純な集計なのか、 20年ぶんの例外処理なのかで、規模がひと桁変わります。 そして中身の重さは、外から眺めていても分かりません。
実際のファイルを1つ見せていただければ、中に何が埋まっているかを読み解いて、 移行の規模と、先に現場へ確認すべき論点をお出しします。読み解いた結果、いまのまま使い続けるほうが良いと判断したら、そう申し上げます。