
この話で最初に出てくるのが「RPAで転記を自動化できないか」です。 気持ちはとても分かるのですが、RPAはいまの手順をそのまま速くする道具なので、二重入力が生まれる構造そのものは残ります。打ち直しの回数は減っても、打ち直す場所が3つあること自体は変わりません。
二重入力がどこで生まれているかを、実際の仕事の流れに沿って分けると4つになります。 どこが重いかは、扱っている商材と、いま使っているシステムの組み合わせで変わります。
注文が、メール・電話・FAX・取引先のポータル・EDIなど、いくつもの入り口から入ってくる。入り口ごとに書き方が違うので、最初にどこへ書くかが人によってバラバラになります。
入り口が複数あるかぎり、下流では必ず打ち直しが起きます。
受注の内容を、生産管理・在庫・原価の表へ転記する。ここがいわゆる「2度目の入力」で、多くの方が自動化したいと考える工程です。
ここだけ速くしても、次の3番が残っていると効果は思ったより出ません。
数量が増えた、納期が延びた、仕様が変わった。変更が入ると、さきほど転記した3箇所を全部追いかけて直すことになります。しかも直し忘れは、後の工程まで気づかれません。
変更の多い会社ほど、ここが二重入力の本当の発生源になっています。
月末に請求書を起こすとき、受注の数字と実績の数字を照らしながら、もう一度打つ。合わない箇所を探して、どこで枝分かれしたのかを遡ることになります。
ここで時間が溶けるのは、上流で数字が分岐しているからです。
ご相談の多くは「2番の転記を自動化したい」から始まります。 ところが実際に工数を測ってみると、時間を食っているのは3番の「変更を追いかける作業」だった、ということがよくあります。
転記は1件あたり数分で終わりますが、変更は1回の変更が3箇所の修正を呼ぶので、変更が多い月ほど作業量が跳ね上がります。しかも直し忘れが起きたときの手戻りは、 転記ミスの比ではありません。ここを見ずに2番だけ自動化すると、 「速くなったはずなのに、忙しさが変わらない」という結果になります。
メール本文・FAX・PDFの注文書から、品目・数量・納期・単価を同じ形に取り出す。入り口を統一できない会社でも、入ってきた直後に形を揃えられます。
前回と何がどう変わったかを機械が持てば、人は変わった箇所だけを見れば済みます。3箇所を目で追う作業がなくなります。
同じ数字を複数の表が持つのをやめ、1つの台帳を全員が見る形にする。地味ですが、二重入力を根本から消せるのはこれだけです。
私たちは解体業向けのAIシステムを自社で開発し、実際の現場で毎日動かしています。 そこでは案件を1本の台帳として持ち、 見積から原価の内訳、注文書・注文請書、請求、支払までを転記せずに繋げています。数量を1箇所直せば、下流の帳票は作り直されます。
「作れます」ではなく、動いている画面をお見せできます。業種が変われば扱う品目も帳票の様式も変わりますが、 「数字を1箇所に持ち、変更を下流に流す」という骨格は、そのまま載せ替えられます。
二重入力の原因が入り口にあるのか、変更の伝わり方にあるのか、 それとも締めの突合にあるのかは、 取引先からの受け方、いま使っている基幹システム、 変更がどれくらいの頻度で入るかによって変わります。 同じ業種でも、Excelの持ち方ひとつで打ち手が入れ替わります。
御社の受注から請求までを30分ほど伺えれば、同じ数字が何回書かれているかを数え、 最初に手を付けるべき1箇所をお出しします。台帳の持ち方を変えるだけで済むなら、開発せずにそう申し上げます。